先週(2026年8月9日〜15日)は、株高の見出しが並んだ一週間でした。東証プライムの4〜6月期は純利益が前年同期比68%増、日経平均は68,714円まで戻しています。ただ、中小企業の経営に効いてくるのは、そちらではありません。資金繰り・コスト・拠点の前提が、3か所で静かに書き換わりました。数字そのものより、それが自社の来期の計画をどう変えるかという視点で整理します。
円は再び160円が視野に ―「介入があるから大丈夫」は前提にできない
先月の日米協調介入の効果が薄れ、円相場は対ドル159円台で週を終えました。日銀が10月までの利上げを視野に入れており、介入効果を保ちたい政府もこれを支持する姿勢だと報じられています。市場では「円買い介入への警戒を解くのは時期尚早」としながらも、160円へじり安という見方が優勢です。
ここで注意したいのは、円安と利上げが同時に来るという組み合わせです。輸入コストは上がり、借入金利も上がる。どちらか片方なら耐えられる会社でも、両方が同じ四半期に来ると資金繰り表の景色が変わります。とくに、変動金利で設備投資の借入を抱えている会社は、「金利が上がったら考える」では遅くなります。もうひとつ、値上げ交渉の準備です。為替が動いてから説明の材料を集め始めると、取引先には「便乗」に見えます。動く前に、原価のどこが為替に連動しているのかを一枚にまとめておくだけで、交渉の速度と納得感がまったく変わります。
DeepSeekが最大12倍の値上げ ―「AIは安くなり続ける」という前提の終わり
中国のDeepSeekが、8月17日からAPI料金を最大12倍に引き上げ、混雑時間帯の割増価格も導入すると発表しました。今年前半の低価格攻勢が、コスト構造の限界に突き当たった形です。
これは一社の値上げにとどまりません。この1年、社内へのAI導入を進めてきた会社の多くは、単価は下がり続けるという前提で予算を引いています。その前提が崩れたときに効いてくるのが、業務ごとの費用対効果を測っていないことと、特定のベンダーに深く依存していることの2つです。前者は「便利だから使う」で広げた分が、値上げの瞬間に一斉に見直し対象になります。後者はもっと厄介で、切り替えたくても業務が止まるため、提示された価格を飲むしかなくなります。いま必要なのは利用の抑制ではなく、どの業務に、いくら払っているのかを見える形にしておくことです。単価が2倍になっても続ける業務と、そこでやめる業務を先に決めておけば、値上げは事故ではなく判断になります。
不動産は「数量が減って価格は上がる」ねじれが続く
2026年7月の首都圏中古マンションの成約件数は3,638件で、前年同月比8.6%減。4か月連続の減少です。その一方で、既存マンションの成約価格は2か月連続のプラス。オフィスも堅調で、都心5区の空室率は1%割れが目前に迫っています。
取引が細っているのに価格は上がる。これは買い手が強気なのではなく、動く物件そのものが減っている状態です。経営判断として効いてくるのは移転と増床のタイミングでしょう。空室率が1%を割る市場では、条件を比較して選ぶという交渉自体が成立しなくなります。オフィスの契約更新が1年以内に来る会社は、更新月の直前ではなく、いまの段階で現在地の賃料水準と代替候補を把握しておくことをおすすめします。採用を増やす計画があるなら、なおさらです。席が足りないと分かってから探し始めると、選択肢はほぼ残っていません。
今週の一手
この週のニュースから、30分でできることを2つだけ挙げます。ひとつは、変動金利の借入について「金利+0.5%」時の年間返済額を試算して手元に置くこと。もうひとつは、AI関連の月額費用を業務別に一枚にまとめ、単価が2倍になっても続ける業務に印を付けておくことです。どちらも今すぐ何かを変える作業ではありません。ただ、相場や価格が動いた瞬間に、迷う時間がなくなります。経営の差は、情報を早く知ったかどうかではなく、動いたときにどれだけ早く決められるかで開きます。Earth Compass は、こうした判断の前提を整える場づくりから、組織づくりの伴走支援を行っています。
