10月第5週(10月25日〜31日)は、GMOへのサイバー攻撃が利用者のPCを脅す段階まで進み、日銀総裁が物価目標2%への到達を口にした週でした。経営者が見るべきは、社内の「悪い知らせ」の通り道、値上げと賃金の前提、不動産の出口の自由度の3点です。
社内で出ていた指摘は、判断する人に届いているか
GMOインターネットグループのクラウドサービスへの不正アクセスで、攻撃者は約79億円を要求し、利用者のPCへの攻撃を予告しました。同社は個人情報を公開された被害者への見舞金を最大300万円とし、社債の上乗せ金利も急上昇しています。代表は社内のホワイトハッカーが事前に指摘していたのに対策が遅れたと明かし、脆弱性は2年前に子会社が指摘していたとも報じられました。
技術の話に見えて、根っこは組織の話です。危険を知っている人がいても、その声が判断できる人に届かない、届いても後回しにされる。これは中小企業でも珍しくありません。「パスワードを使い回している」「辞めた人のアカウントが残っている」といった問題は、現場の誰かがすでに気づいていることが多いものです。困るのは、言った人が面倒がられたり、優先度の低い要望として埋もれたりすることです。見舞金や資金調達コストの上昇のように、後から払う代償は対策の費用よりずっと大きくなります。指摘を誰が受け取り、いつまでに、やるかやらないかを決めるかを決めておく。やらないと決めたなら理由を残す。それだけで、放置は「判断」に変わります。
2%到達で、価格の据え置きは実質の値下げになる
日銀の植田総裁は物価目標の2%に到達したとして「一つの節目」と述べ、利上げを続けるかは次回の会合も含めて判断するとしました。政府は電気・ガス代の支援を12月に再開する一方、ガソリン補助は段階的に縮小する方針です。
物価が年2%前後で上がり続ける前提に立つと、価格を据え置くことは実質的な値下げです。仕入れや人件費が上がるなかで単価を動かさない会社は、気づかないうちに利益を削っています。一方で、大手の小売りが5年で1割を超える値上げをしてきたとの報道もあり、顧客の実感は統計の2%より重いかもしれません。だからこそ一律の値上げより、手間のかかる仕事や小口の取引から順に価格を見直すほうが受け入れられやすいはずです。支援が再開されても、ガソリン補助のように支えは少しずつ外れていきます。金利も上がる方向なら、借入の返済計画と並べて、来年度の価格と賃上げの幅を同じ表の上で考えておく時期です。
都心の不動産は「いつでも売れる資産」ではなくなるかもしれない
東京都千代田区は三菱地所レジデンスなどに、区内で計画する分譲マンションを5年間転売しないよう求めます。対象は都の制度で容積率の緩和を受ける物件で、個別の物件に働きかけるのは初めてです。
狙いは短期の転売を抑えることですが、経営の目で見ると「買った物件をいつ手放せるか」に条件が付き始めたということです。社宅や資産として都心の物件を持つ会社にとって、売却のタイミングは資金繰りの安全弁です。その弁に何年かの縛りがかかる可能性があるなら、買う前に「5年は持ち続けても困らないお金か」を確かめておく必要があります。今回はあくまで要請で、対象も特定の制度を使う物件に限られます。ただ似た動きが広がれば、都心の不動産は「値上がりを待って売るもの」から「長く使うもの」へ性格が変わっていきます。出口を短く見積もった購入や借入の計画ほど、見直しが要ります。
今週の一手
1つ目は、社員に「前から気になっているが言えていない危険」を1人1つ書き出してもらい、受け取る担当者と回答の期限を決めることです。2つ目は、主な商品やサービスの価格を最後にいつ見直したかを一覧にし、1年以上動いていないものから値付けを検討することです。Earth Compassでは、こうした現場の声が上に届く仕組みづくりも含めて、組織づくりを伴走支援しています。
