クラウドが止まり、上司はAIに ― 10月2週の3点

10月第2週(10月4日〜10日)は、企業へのサイバー攻撃が相次ぎ、AIを職場の意思決定にどう組み込むかも具体的に見えてきた週でした。経営者が見るべきは、預けたデータの守り方、管理職の判断の言語化、成長期のオフィスの選び方の3点です。

自社ではなく「預け先」が止まるリスク

IDCFクラウドがランサムウェア攻撃を受け、495の企業・自治体に影響が及び、一部には復元が難しいとの通達も出たと報じられました。同じ週、カーシェアのタイムズカーでは、運転免許証の画像を7年以上保管していたことが160万件の流出につながったと指摘されています。同業他社には、本人確認が済めばすぐに画像を消す例もあります。

2つのニュースに共通するのは、被害の大きさを左右したのが攻撃の巧妙さよりも平時の設計だったという点です。「クラウドに預けているから安全」という前提は、預け先そのものが止まる場面では通用しません。受発注や会計のように、止まればすぐ売上に響く業務については、データの複製が別の事業者にもあるか、止まった日に紙や別のツールで何日回せるかを確かめておく価値があります。もう一つは「持ちすぎない」ことです。本人確認書類や履歴書のように、確認が済めば役目を終えるデータを念のために残していると、それだけで漏えいしたときの被害が膨らみます。保管期限と削除の担当者を決めるのは地味な作業ですが、費用はほとんどかかりません。セキュリティを情報システム担当だけの課題にせず、どのデータを何のために持つのかを経営の言葉で決めておくことが、いちばん手早く効く備えだと考えます。

「AI上司」が問うのは、判断基準が言葉になっているか

NTTドコモビジネスは、部長や課長の判断基準や業務知識を議事録・資料から取り込み、社員の相談に答える「AI上司」を、約1年で社内37組織すべてに200超導入したと報じられました。

これを「管理職がいらなくなる話」と読むのは早計でしょう。注目すべきは、AIに載せられるほど管理職の判断基準が文字になっているという前提のほうです。多くの中小企業では、「この条件なら値引きしてよい」「この種の案件は先に相談」といった基準が社長や部長の頭の中にしかなく、部下は確認待ちになりがちです。その待ち時間が、現場のスピードと若手の育成を同時に止めています。AIを入れるかどうかを考える前に、よく受ける相談を書き出し、自分ならどう判断するかを理由とともに書いてみる。それだけで部下が自分で決められる範囲は広がり、将来AIに載せる素材にもなります。逆に、理由がうまく書けない項目は、基準そのものがまだ固まっていないサインです。そこが管理職どうしで話し合うべき論点になります。

空室率1.19%の東京で、20〜50人企業の移転をどう考えるか

ザイマックス総研によると、9月の東京23区のオフィス空室率は1.19%で、前月から0.15ポイント下がりました。住友不動産は、社員20〜50人の拡大期の企業を対象にした中規模セットアップオフィス「GROWTH CUBE」を立ち上げ、初弾の赤坂は12月に入居を始めます。

空室がここまで少ないと、条件のよい物件は出た時点で決まりやすく、増員してから探し始めるのでは間に合わない場面が増えます。成長期の会社にとって、オフィスは採用計画を左右する設備です。一般にセットアップオフィスは内装や家具が整った状態で借りられるため、初期費用と移転までの期間を抑えやすい一方、月々の賃料は割高になりがちです。判断の軸は、今後2〜3年の人数の見通しがどれだけ固いかでしょう。増員の時期が読みにくい段階なら、身軽さに費用を払う意味があります。人数が安定してきたなら、長く使う前提で内装に投資したほうが総額は抑えられます。また、出社とリモートの比率を決めないまま面積を決めると、どちらを選んでも後で無駄が出ます。働き方の方針を先に固めることが、物件選びの出発点です。

今週の一手

一つ目は、止まると売上が止まる業務を3つ選び、そのデータがどこに保存され、別の場所に複製があるかを担当者と15分で確認することです。あわせて、本人確認書類など役目を終えたデータの保管期限を決めておきましょう。二つ目は、管理職が部下からよく受ける相談を10件書き出し、判断の基準と理由を添えてみることです。判断を言葉にして組織に渡していく作業は、Earth Compassが組織づくりの伴走支援で日々お手伝いしている領域でもあります。

出典

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