円は7円動き、都心ビルは1%を切った ― 9月2週の3点

今週は、1週間で7円以上動いた円相場と日銀の追加利上げ方針、そして都心オフィスと住宅市場の明暗という、経営の前提条件そのものが揺れた週だった。経営者が見るべきは3点――為替の向きに賭けない設計、不動産コストの二極化、そして2027年4月に向けた制度対応の着手だ。

円は1週間で7円超の円高、プロの相場観は真っ二つ

円は9月8日の東京市場で一時1ドル=152円台後半をつけ、1週間で7円超の上昇となった。日銀は9月17〜18日の会合で政策金利を1.0%から1.25%へ引き上げる方針と報じられ、1.25%は1995年以来の水準になる。先行きについては、ヘッジファンドが年内150円割れを見込む一方、モルガン・スタンレーは再び163円へ戻るとの予想を出しており、見方は割れている。

プロ同士で10円以上も予想が割れているのなら、中小企業が為替の向きを当てにいくのは分が悪い。やるべきは予測ではなく、どちらに振れても致命傷にならない形をつくることだ。輸入比率の高い事業にとって円高は仕入れの追い風だが、それを即座に値下げの原資に回すと、相場が戻ったときに価格を戻せなくなる。差益は価格ではなく、人への投資や設備更新に振り向けるほうが筋がよい。輸出やインバウンドに依存する事業なら、152円と163円の両方で粗利がどうなるかを一枚の表にしておくだけで判断の速度が変わる。もう一つ、政策金利1.25%は変動金利の借入が多い会社ほど効く。返済負担の試算は、現行金利に1%上乗せした条件で行いたい。

都心ビルは空室率1%割れ、中古マンションは5ヵ月連続の成約減

東京都心5区の大規模ビル空室率は8月に0.96%と2020年9月以来の1%割れとなり、募集賃料は10ヵ月連続で上昇した。東京駅前の「PCP丸の内」をヒューリックなど国内勢が約2300億円で取得するなど、一等地には国内マネーが向かっている。対照的に首都圏の中古マンション成約は8月に3,180件と前年同月比10.5%減で5ヵ月連続の前年割れ、東京都区部は20.6%減、平均成約価格は4ヵ月連続で下落した。

オフィスと住宅が逆方向に動いている。経営への含意は二つある。第一にオフィスコストだ。都心の賃料は当面下がらない前提で考えるべきで、更新時期が近い会社は「出社率に見合った面積」をいまのうちに設計し直す価値がある。座席数ではなく、会議室・集中席・来客対応の3機能で必要面積を組み立てると、案外小さくて済むことが多い。第二に採用と人の配置だ。住宅の成約減は、金利上昇で買い手が様子見に入ったサインと読める。従業員の住宅取得や転居のハードルが上がれば、遠方採用や転勤の設計に効いてくる。住宅手当や引越支援の水準を、金利上昇分を織り込んで見直す時期だろう。不動産業なら、在庫が6ヵ月連続で増えている以上、値付けの見直しと回転重視への転換を先に打ちたい。

2027年4月の食料品消費税1%と、信用保証上限10億円

政府の税制改正大綱の原案では、食料品の消費税率を2027年4月に1%へ下げ、2029年4月に8%へ戻す方針で、値札の総額表示や予約販売には特例と、税率変更の前後2ヵ月の猶予期間が設けられる見通しだ。経済産業省は中小企業融資の信用保証上限を現在の2.8億円から10億円程度へ引き上げる方向で、2027年の通常国会への法改正案提出を目指すと報じられた。

ここでは政策の是非ではなく、実務としてどう備えるかだけを考える。食品を扱う小売・飲食・卸にとっては、2027年4月と2029年4月の2回、税率が変わる。レジ・請求・会計システムの改修、値札の運用、予約販売の税率判定、複数税率の経理処理を、あと1年半で2回分設計する必要がある。これはシステム投資であると同時に現場教育の問題で、パート・アルバイトを含む店舗の運用に落とし込めるかで差がつく。信用保証の上限引き上げは、事業承継やM&A、大型の設備投資を考える中小企業の選択肢を広げる。ただし、借りられる額と返せる額は別だ。金利1.25%の時代に10億円を借りるなら、事業計画の精度がこれまで以上に問われる。いずれもまだ原案・検討段階だが、この種の制度対応は「決まってから動く」と間に合わない。

今週の一手

一つ目は、為替と金利の「2シナリオ表」を1枚つくること。152円と163円、現行金利と+1%の組み合わせで、粗利と年間返済額がどう変わるかを書き出す。二つ目は、食品を扱う会社なら2027年4月に向けた税率変更チェックリスト(システム・値札・予約販売・現場教育)に着手すること。食品を扱わない会社は、オフィス面積の棚卸しをこの週に済ませたい。Earth Compassは、こうした外部環境の変化を組織の意思決定に落とし込む伴走支援を行っている。

出典

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