その1on1、進捗確認になっていませんか

1on1ミーティングは、多くの企業ですっかり定着しました。一方で、管理職の方とお話しすると「毎週続けてはいるが、何が変わったのか分からない」「結局、進捗の確認で終わってしまう」という声を、非常に頻繁に伺います。同じ30分を使いながら、メンバーの表情や発言量が明らかに変わっていくチームもあります。その差を生んでいるのは、上司の話術でも、相性の良し悪しでもありません。1on1という時間を「何のための場か」と定義し、その定義どおりに運用できているか。違いはほぼ、そこに集約されます。

1on1が「小さな進捗会議」に変わってしまう理由

形骸化した1on1には、共通の症状があります。上司が「あの件どうなった?」と切り出し、メンバーが状況を報告し、上司が助言や指示を返して終わる。悪気はなく、むしろ誠実に向き合った結果なのですが、これは1on1ではなく個別の進捗会議です。メンバー側から見れば「週に一度、追加で報告を求められる時間」であり、負担にはなっても、前進した実感は残りません。

原因は多くの場合、議題を用意しているのが上司側だけという点にあります。人は手ぶらで席に着くと、目の前にある一番わかりやすい話題、つまり足元のタスクの話から入ります。テーマ設定を相手に委ねる仕組みがないまま回し続ければ、この場は自然と進捗確認へ引き寄せられていきます。まずは「なぜこうなるのか」を、担当者個人の姿勢ではなく仕組みの問題として捉え直すことが出発点です。

最初の5分の主導権を、メンバーに渡す

明日から試せる、最も効果の大きい一手があります。1on1の冒頭で、上司は最初に質問をしないと決めることです。代わりに「今日はどこから話しましょうか」とだけ伝え、あとは待ちます。沈黙が数十秒続いても構いません。この数十秒は、メンバーが「自分が本当に話したいこと」を思い出すために必要な時間です。上司が先に切り出してしまうと、その日の議題は上司の関心事に固定されてしまいます。

さらに効果を高めるなら、前日までに「明日話したいことを、一行でいいので送ってください」と依頼しておく方法があります。一行で構わない、という点が重要です。準備の負荷を上げてしまうと、それ自体が続かない理由になります。加えて上司の側では、「話す時間の割合」を意識的に見てみることをおすすめします。目安は、メンバーが7割、上司が3割。録音までする必要はなく、終了後に「今日はどちらが多く話しただろうか」と一度振り返るだけでも、次回の進め方は確実に変わります。

30分を「点」ではなく「線」にする

もう一つの落とし穴が、毎回その場限りで終わってしまう「点」の1on1です。前回何を話し、何を決めたのかが双方の記憶頼みになっていると、メンバーは「話しても何も動かない」と学習していきます。これは意欲の問題ではなく、極めて合理的な判断です。ここで必要なのは、立派な議事録ではありません。共有のメモを一枚だけ用意し、日付・話したテーマ・次までに誰が何をするか、この三点を数行残せば十分です。

そして次回、冒頭でそのメモを一緒に開くことを習慣にします。前回の続きから始まるという体験が積み重なると、メンバーはこの30分を「自分の仕事や働き方について、責任を持って一緒に考えてもらえる場」として認識し始めます。さらに四半期に一度は、直近3回分のメモを並べて眺めてみてください。同じ悩みが繰り返し出てきているなら、それは個人の課題ではなく、業務の設計や役割分担そのものを見直すべきサインであることが少なくありません。

まとめ ― 場の質は、設計で変えられる

1on1が機能しない原因は、多くの場合、上司の能力や熱意ではなく設計にあります。議題を相手に渡す、最初の5分を待つ、一枚のメモで前回とつなぐ。いずれも明日から着手でき、特別なコストもかかりません。こうした小さな仕組みが積み重なったとき、メンバーは「自分の考えを口にしてよい」と感じ始め、チームは指示を待つ集団から自ら動く集団へと変わっていきます。Earth Compass は「躍動する組織を増やす」ことをパーパスに掲げ、1on1をはじめとする対話の仕組みづくりから、その定着・改善までを経営者・管理職の皆さまと伴走しながら支援しています。自社の1on1に手応えを感じきれていない方は、まず現状の運用を一緒に棚卸しするところから始めてみませんか。

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